旋盤を使った加工品は、産業機器・自動車・医療・食品・建築などありとあらゆる業界で使用されています。しかもその材質・形状・精度などは使用環境により千差万別であり、中には使用用途に適さない設計や加工方法が取られている場合があります。つまり、旋盤加工というものは何か?どんな工具を使って、どうやって切削加工を行うのか?そしてどんな形状が実現できるのか?寸法精度や幾何公差など、その限界値は?など、旋盤加工に関する知識を持っておくことが、旋盤加工品のQCDを高めることに繋がります。そこで旋盤加工VA・VE.comを運営する㈱オーゼキでは、旋盤加工に関わる設計者・開発者・開発購買の方に知っておいて頂きたい情報を下記にて纏めました。ぜひご覧ください。

 

1.旋盤加工とは

 旋盤加工とは、金属・非鉄金属あるいは樹脂などのワーク(丸棒・角材・異形材)をチャックでクランプして、回転させたワークに対してバイトと呼ばれる切削工具を当てることで不要な部分を除去するために切削(旋削)を行い、任意の形状を得る切削加工方法のうちのひとつです。丸い形状のワークを削る際にはこの旋盤加工という手法が使われます。

 なお、この旋盤加工とは別に「フライス加工」という切削加工方法があります。旋盤加工では回転するワークに固定した工具を当てることで切削を行いますが、フライス加工はこの逆で、固定したワークに対して、ドリルやエンドミルなどの回転した工具を当て切削を行う、というものです。どちらも切削加工の部類ですが、根本的に加工の方法が異なるのです。

 

2.旋盤加工の歴史

旋盤という加工方法が生まれたのは産業革命よりも前に発明されたと言われています。もともとは、ろくろの原理を応用して木を削る(木工)ことが目的でした。例えば日本で言うと「こけし」や「皿」などの工芸品を作る際の工程を想像してみて頂ければ分かると思います。

その後、精錬などの技術が発展し、金属を効率よく削る必要性が高まりました。これに伴い、旋盤も柔らかい木材だけにとどまらず鉄を削る要求が高まってきたため、金属を旋削できる旋盤をイギリスのモーズリーが発明したと言われています(諸説あり)。ちなみにフライス盤はアメリカで発明され、さらに旋盤のCNC制御装置をフライス盤に乗せて出来たのがマシニングセンタの始まりと言われています。そういった意味で旋盤の発明というものは世の中を大きく変えたと言っても過言ではありません。

 

3.旋盤加工の特徴

他の切削加工と比較した場合の、旋盤加工の特徴は下記になります。

①丸物の加工に適している

②連続加工が可能で、量産品に適している

③精度の高い加工が可能である。

④単純な丸物に加え、複雑形状も加工が可能である。

旋盤加工機には単純に回転させた素材に対して刃物を当てる旋盤加工に加えて、「ミーリング機能」といって、工具が回転することで切削加工を行う機能を備えたNC旋盤加工複合旋盤加工などがあります。こうした機能を備えた加工機を用いれば、複雑形状でも加工を行うことが可能です。

 

4.旋盤加工で作られる製品

旋盤加工によって製作される製品には様々なものがありますが、基本的にバー材と呼ばれる丸い棒から削り出すので、俗にいう「丸物」が殆どです。

旋盤加工VA・VE.comを運営する㈱オーゼキでは、ピストンスリーブ・スプールなど、様々な形状の旋盤加工を行っています。詳しくはこちらをご覧ください。おおよそ、どのような形状のものが旋盤によって加工可能なのか、お分かり頂けると思います。

旋盤加工事例はこちら

 

なお、丸棒のバー材から丸物ではなく「角物」を削り出すことも可能です。これは複合旋盤加工機と呼ばれる旋盤加工機とマシニングセンタを組み合わせたものを使用して行われることが多いのですが、この複合旋盤加工を用いて角物ワークを切削加工することの利点は、ケースによっては連続自動運転が可能になる、ということです。ただし、すべての工程を複合旋盤加工で行う(工程集約)ことになるので機械を占有してしまうことに繋がりますので、生産性を考慮して機械を選択することが必要となります。

また、旋盤加工は様々な材質のワークを切削加工することが可能です。代表的な材質はアルミステンレスになりますが、このほか真鍮、鉄、樹脂なども旋盤によって加工を行うことができます。

 

5.旋盤加工でできること

一口に、回転している材料に対して刃物を当て切削を行う、と説明しましたが、その加工方法は実は分類すると様々なものが存在します。

①外径加工

②内径加工

③ネジ切り加工

④タップ加工

⑤穴空け加工

⑥溝加工

⑦ローレット加工

⑧総型加工

⑨ミーリング加工

⑩スロッター加工・ブローチ加工

上記は旋盤加工で出来る加工方法の一部ですが、こうした加工方法を組み合わせて製品が削り出されます。

 

6.旋盤加工機の種類

また、旋盤加工機も汎用旋盤から複合旋盤まで様々なものが存在し、その特徴も様々です。

①汎用旋盤

②卓上旋盤(ベンチレース)

NC旋盤

NC自動旋盤

複合旋盤

センタレス研磨

 

7.旋盤加工に使用する工具

金属を削るという観点で言うと、一般的にはドリルが想像しやすいですが、旋盤加工で使用する工具といえばバイトです。この他、様々な工具が使用されますが、分類すると、下記のとおりです。

①回転させたワークに、工具を当てる
→ バイト(外径)、ボーリング(内径)、ドリル(穴あけ)など

②固定したワークに、回転させた工具を当てる
→ ドリル(穴あけ)、エンドミル(形状)など

汎用旋盤であれば①に分類される工具を使用しますが、昨今のNC旋盤・複合旋盤にはミーリング機能がありますので、①の工具に加えて②の工具も使用されます。こうした機能と工具を組み合わせることで、旋盤内で様々な加工が行われ、複雑な形状の製品を製作することができます。

8.旋盤加工で実現できる、加工精度

機械加工品における加工精度や幾何公差は、ワークの材質をはじめ、サイズや形状によっても大きく左右されます。例えばアルミという材質を選択した場合は、例えば±0.005mm程度の高精度な加工が可能になります(高精度なアルミ旋盤加工品はこちら)が、一方樹脂となると材料自体が柔らかいため、寸法精度±0.01mmを達成するのはとても難易度が高くなります。

旋盤加工VA・VE.comでは、旋盤加工で達成できるおおよその加工スペックを纏めておりますので、ぜひ参考になさってください。

 

旋盤加工スペックはこちら

 

なお、旋盤加工VA・VE.comを運営するオーゼキでは、切削加工における加工精度を高めるための様々な技術開発を行っております。もしご興味のある方はコチラをご覧ください。

技術開発への取り組みはこちら

 

8.まとめ

 いかがだったでしょうか?旋盤加工について上記のことを押さえておけば、もし旋盤加工が必要な部品を設計・調達しなくてはならなくなった場合でも参考にして頂けると思います。また、当社では旋盤加工に対するVE提案を頻繁に行っておりますので、ぜひコチラも参照してください。

さらに図面を用いて実際に相談したいという場合は、お気軽にお問い合わせ頂けばと思います。

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